特集 変革に立ち向かう病院―病床削減と人材難に対処する
医師需給の現状と展望
長谷川 敏彦
1
1日本医科大学医療管理学教室
pp.308-313
発行日 2007年4月1日
Published Date 2007/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541100523
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ここ1~2年,日本の医療界では「医師不足」が語られ始め,それがさらに社会現象の感さえ呈し始めている.1980年代に「医師過剰」が問題とされていたことから考えると,隔世の間を禁じえない.事実,70~80年代は医師需給検討委員会の開催毎に「過剰」の記事が現れていたのに対して,ここ1~2年「医師不足」の記事が急増している(図1).それは病院の現場から40歳前後の活動的な医師が相次いで辞め,「立ち去り型サボタージュ」と呼ばれる現象と呼応している.医師リクルート会社による大学医局長アンケートでは,大学医局での認識も80~90年代前半には,新設医大創設ラッシュの結果,「医師過剰時代が到来する」との意見が多かったものが,2000年前後を境に「過剰ではない」にシフトしており,既に現在の予兆が存在していたことがわかる(図2).
しかし,本当に医師は不足しているのであろうか.毎年7,700名もの新たな医師が誕生し,毎年リタイアする医師がいるものの,医師数は着実に増加している.一方,ここ1~2年で急激に需要が増加した事実はない.むしろ,外来は全体に減少傾向とさえ言える.また,一部の診療科では病院,診療所共にむしろ過剰が問題となっている.
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