特集 輸血の管理
わが国の血液需給の問題
村上 省三
1
1東京女子医大・輸血部
pp.25-29
発行日 1969年10月1日
Published Date 1969/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541203767
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昭和39年8月21日,閣議において,政府としては可及的すみやかに‘保存血液’を献血により確保する体制を確立することが決定されて,はや5年の歳月が流れ去ろうとしている.その間関係者の努力もあって,とにもかくにも,わが国の医療用血液源は,一握りの売血者から医学的常識を無視して強行されていた過剰採血を主とするいまわしい制度から,相互扶助を表にかかげた献血制度へと切り替わり,今日ではすでに医療用血液の80-90%は献血で,残りは預血でという状態にまで育ってきたことは,慶賀にたえないところである.
しかし新しい献預血の制度自体は,またわれわれに新しい問題を投げかけ,その解決が迫られているというのが実情であろう.血液需給の国家的見地からの検討,将来計画などについては他の筆者も予定されているようであるし,いたずらに同じ問題を論じてみてもしかたがないので,ここでは主として血液使用者側からながめた問題点について論じてみたいと思う.もっとも医療用血液の問題の解決はその提供者,製造加工を行なう側,さらには使用者の密接な協力によってはじめて達しうるものであるので,使用者側の一員としていたずらに他を責めるのみの立場はとりえないし,またとりたくもない.おたがいに反省すべき点を謙虚に提示し,解決をはかるべきなのではあるまいか.
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