徹底分析シリーズ 硬膜外さいこう
胸部手術には胸部傍脊椎ブロックを—超音波ガイド下時代の鎮痛法
櫻庭 園子
1
,
久米村 正輝
1
Sonoko SAKURABA
1
,
Masateru KUMEMURA
1
1順天堂大学医学部附属静岡病院 麻酔科・ペインクリニック
pp.802-806
発行日 2021年8月1日
Published Date 2021/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3101202049
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
58歳の男性。身長172cm,体重76kg。左下葉肺癌で開胸手術予定。術前に訪室して麻酔の説明をすると,「注射とか痛いのは苦手なんだよね…」と硬膜外麻酔には消極的な様子。しっかり説明して硬膜外麻酔の同意を得て,いざ当日。
筋肉質で椎間がわかりにくいうえに,表面の局所麻酔の時点で動いてしまい,体勢を取り直したところで改めてTuohy針を進めてもまた体が動く…。なんとかカテーテルを留置,無事に手術を終え患者はICUへ。当日夕方に訪室してみると,なんとあんなに苦労して入れた硬膜外カテーテルがもう抜かれている! 看護師に聞くと「血圧が下がるので呼吸器外科の先生が抜きました」と。アセトアミノフェンとNSAIDsを投与されているが,硬膜外麻酔の効果が切れてきた患者は痛そうな様子…。今朝の苦労はいったい何だったのか…。
…
硬膜外麻酔は胸部外科手術の鎮痛では第一選択になるケースが多いとはいえ,穿刺が難しいこともあり,凝固障害があったり,抗凝固療法をしていたりと障壁も多い。一方で,胸部傍脊椎ブロック(TPVB)は深部ブロックに分類され,実施できる麻酔科医がいないという施設もあるだろうが,TPVBには「硬膜外麻酔の代替」というだけではなく,TPVBにしかない利点もある。麻酔方法の選択肢は多いほうが患者のためになるし,なにせカッコいい! 本稿を読んでTPVBを習得したいという読者が増えたら幸いである。
Copyright © 2021, MEDICAL SCIENCES INTERNATIONAL, LTD. All rights reserved.