快人快説
—麻酔メカニズム研究シリーズ②—麻酔はなぜかかるのか?今はどのように考えられているのか?
廣田 弘毅
1
Koki HIROTA
1
1富山大学附属病院 麻酔科
pp.971-981
発行日 2020年9月1日
Published Date 2020/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3101201777
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
はじめに
1846年ボストンのマサチューセッツ総合病院において,ウィリアム・モートンWilliam Morton(1819-1868)が世界で初めてのエーテル麻酔を施行してから170年以上が経過したが,全身麻酔のメカニズムには依然として不明な点が多い。『Nature』誌や『Science』誌に掲載されるようなノーベル賞級の研究があるにもかかわらず,なぜ麻酔メカニズムは解明されないのであろうか。
理由はいくつか考えられるが,その一つは麻酔メカニズム研究がタコツボ型だということである。世界の麻酔科学者は,自分のメソッドや研究成果には精通しているが他の実験系には疎い。自分のタコツボの中はよく知っているが,すぐ隣のタコツボのことさえもう一切わからないのである。
そこで本稿では,このタコツボを取り払い(打ち壊し?),世界の麻酔メカニズム理論をすっきりと見通してみようと考えた。無数にあるタコツボを叩き壊す荒療治には助っ人が必要である。そこで登場するのが,オペラ座の怪人とヒロイン・クリスティーヌ…ではなく,オペ場の快人(どくとる)と研修医モリスティーヌ(モリリン)である(図1)。この両人によるボケ・ツッコミ快説の勢いで,麻酔迷宮の禁断の扉を開けてしまおう。
おや,さっそく向こうからモリリンのおしゃまな声が…。
Copyright © 2020, MEDICAL SCIENCES INTERNATIONAL, LTD. All rights reserved.