特別企画 東日本大震災から10年
手術部への影響と今後の南海トラフ地震に備えて—迫り来る大災害に手術・集中治療ニーズへの対応は万全か?
福田 幾夫
1
Ikuo FUKUDA
1
1吹田徳洲会病院 心臓血管センター
pp.216-220
発行日 2021年3月1日
Published Date 2021/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3101201914
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2011年の東日本大震災から10年が経過したが,その後も2016年熊本地震,2018年大阪府北部地震,北海道胆振東部地震と大きな地震災害が相次いでいる。また,2015年には常総市水害,2018年に中国・四国地方豪雨災害が起こり,これらの災害でも病院は被災した。南海トラフ地震が30年以内に70〜80%の確率で発生すると予測されており,その被害は最悪で死者12万〜23万人と予想されている1)。30年以内に70%の確率で起こるとされている首都直下地震では,建物倒壊による死者最大約11000人,揺れによる建物被害に伴う要救助者最大約72000人,火災による死者最大約16000人と予想されており2),都内の病院には多数の災害負傷者が押し寄せるだろう。被災中心地の病院では,建物の倒壊によるクラッシュ症候群,多発外傷,骨折,火災による熱傷などにより集中治療,手術の医療ニーズは高まるが,病院が被災すれば医療供給能力は低下する(図1)3)。交通網の寸断は患者搬送に支障をきたすとともに,物流の障害をきたす。日頃の準備により医療供給力の低下を最小限にして医療需要を賄わなければならない。
本稿では,筆者の前任地の弘前大学医学部附属病院手術部で行った東日本大震災における手術室の運営に関する調査結果を紹介し,今後起こり得る大災害に向けて手術部・ICUでの備えについて述べる。
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