徹底分析シリーズ がん緩和医療 最前線
巻頭言
堀江 里奈
1
1京都府立医科大学 疼痛・緩和医療学教室
pp.1257
発行日 2020年12月1日
Published Date 2020/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3101201846
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- 文献概要
昨今の腫瘍学の進歩は目覚ましい。がん患者の生存率改善に伴って,がん患者の手術は今後も増加するであろう。これまでは,がん患者といえども呼吸循環や脳神経など,がん以外の合併症にもっぱら注力することが多かったが,今後はオピオイド長期内服やADL低下など,がんそのものに伴う麻酔リスクをもつ症例が増えることは想像に難くない。
同時に,緩和医療に使用する薬剤や考え方も大きく変わってきている。ヒドロモルフォンは2017年に承認された新しいオピオイドである。また,がん患者が手術という大きな山にどのように登頂し,無事下山後はどのような日常を歩むのか,ACP(advance care planning)が重要になってくる。
本徹底分析シリーズでは,最初にがん治療・緩和医療の最新知見,中盤にオピオイド使用患者の周術期管理,そして最後にACPについて解説した。オピオイド使用患者の周術期管理は,実際上も難しい問題であり,また,患者ごとに個別に対応することが最も重要である。今回は,2例の食道癌症例の麻酔・周術期管理について二つの施設に執筆いただいた。これを参考に各施設で,それぞれの症例に対する麻酔方法を考察してみてほしい。
周術期管理のみに携わっている麻酔科医でも,日々のがん患者の麻酔や集中治療を行うにあたっては,最新の緩和医療の知識を習得しておくことが必須である。そして,いざがん患者の手術麻酔に臨む際には,麻酔科医としての本領を発揮していただきたい。
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