徹底分析シリーズ 術後慢性痛への挑戦
苦しむ患者を救うには?—痛み治療に精通している麻酔科医が果たす役割は大きい
伊東 久勝
1
,
山崎 光章
1
Hisakatsu ITO
1
,
Mitsuaki YAMAZAKI
1
1富山大学大学院医学薬学研究部 麻酔科学講座
pp.772-775
発行日 2018年7月1日
Published Date 2018/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3101201169
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手術を受けた患者は,少なからず組織の損傷による痛みを経験するが,この急性期の痛みは通常,組織の回復とともに消失する。術後慢性痛chronic post-surgical pain(CPSP)は,通常ならば痛みが消失する時期(3か月)を越えて痛みが持続する病態をさす。術後慢性痛は手術患者の10〜50%に発症し,そのうち2〜10%は日常生活に支障をきたす重症な痛みである1)。重症術後慢性痛患者は不眠や活動意欲の低下,うつなどの気分障害に悩まされ,社会的活動や職業からのリタイアを余儀なくされる。術後慢性痛対策は周術期医療の最重要課題である。これまでの疫学研究によりさまざまな危険因子が明らかにされてきた(表1)。特に,術後急性期の強い痛みは,術後慢性痛の発症と強い相関があることがわかっている。術後急性痛を良好にコントロールすることで,術後慢性痛を予防できる可能性について,これまでに多くの調査が行われている。
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