徹底分析シリーズ 古くて新しい 炎症
巻頭言
河野 崇
1
1高知大学医学部 麻酔科学・集中治療医学講座
pp.819
発行日 2020年8月1日
Published Date 2020/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3101201741
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- 文献概要
炎症反応は,侵襲から生体を守る防御機構の一つであり,創傷治癒や病原体排除に重要な役割を果たす。ところが,過剰な炎症反応は,多臓器不全を惹起し,生存を脅かすという側面もある。実際に,炎症は多くの術後合併症の共通するメカニズムと考えられている。つまり,適切な炎症の制御は,術後の回復や予後を左右する。だからこそ,手術侵襲による炎症反応をそのメカニズムから理解することが麻酔科医には求められる。
炎症・免疫分野に関する研究の歴史は古いが,近年その進歩は目覚ましく,新しい創薬の原理を次々と生み出している。特に,関節リウマチに対する治療を皮切りに,不治の病と考えられていた難治性炎症性疾患も根治を目指す時代となった。今後,このような潮流が周術期管理にも波及すると考えられる。そこで,本徹底分析シリーズでは,周術期の炎症に着目し,全身麻酔薬,プレハビリテーション,抗炎症療法,心臓手術,術後認知機能異常,術後痛,炎症マーカーをキーワードに,最新知見を提示した。さらに,最近の話題として,新型コロナウイルス感染症の重症化メカニズムに炎症反応がどのように関与するかについても盛り込んだ。
術後合併症や長期予後に深く関与する炎症について,現在までにわかっていること,今後検討すべき課題を整理することで,読者の臨床あるいは研究活動に役立つことを期待している。
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