徹底分析シリーズ 麻酔科医の薬物依存
麻酔科医ならではのアブナイ背景—麻酔科医とSTIGMA
山口 重樹
1
Shigeki YAMAGUCHI
1
1獨協医科大学医学部 麻酔科学講座
pp.384-392
発行日 2020年4月1日
Published Date 2020/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3101201639
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麻酔科医は日々オピオイド鎮痛薬(以下,オピオイド)を中心とした麻酔薬を処方,施用し,その光(医療に必須の薬であること)と影(不適切使用による危険性)を熟知しているはずである。しかし麻酔科医の薬物依存の報告は全世界中で絶えない。薬物依存は麻酔科医にとっての職業病(あるいは労災)であると筆者は常々考えてきた。ある学会のシンポジウムにおいて,そのことを話すと,学会のある重鎮に「麻酔科医はそんな柔ではない,麻酔科医という専門家を他者に勘違いさせるような発言はけしからん」と叱られた。限られた時間内でのシンポジストとしての発言であったために,誤解されたのかもしれない。筆者は欧・北米・豪を訪問し,自分なりに学んできたオピオイド使用障害の実態と日本でオピオイド使用障害に陥った慢性疼痛患者の診療経験にもとづいて,シンポジストとして話したつもりであったのだが。
本稿は,多くの麻酔科医に「麻酔科医ならではのアブナイ背景」について知って欲しい,そして「麻酔科医は薬物依存に陥ることはない」と信じ込んでいる方にその危険性について少しでも耳を傾けて欲しいと,幾度と書き直しながら執筆を終えた。
本稿では,麻酔科医の薬物依存について医療用麻薬に指定されているオピオイド,特に「フェンタニル」を中心に述べる。オピオイドに関しては,オピオイドの使用障害に陥る薬物依存患者と麻酔科医には多くの共通点(図1)があることを知って欲しい。ぜひ,以下に述べることを他人事と思わず,最後まで読んでいただきたい。
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