徹底分析シリーズ 術後慢性痛への挑戦
巻頭言
天谷 文昌
1
,
川真田 樹人
2
1京都府立医科大学 麻酔科学教室
2信州大学医学部 麻酔蘇生学教室
pp.755
発行日 2018年7月1日
Published Date 2018/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3101201165
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- 文献概要
創部痛はかなりの頻度で慢性化することが知られています。病気を治療するはずの手術によって慢性痛が生じ,患者を長く苦しめるという悲劇的な事態に対して,痛み治療のスペシャリストである麻酔科医はどのようにかかわるべきなのでしょうか。術後慢性痛をさまざまな角度から分析するため,この領域で活躍中のエキスパートに解説をお願いしました。
はじめに,術後慢性痛の疫学と発症メカニズムについて,定義,社会的インパクトから,日本の現状に至るまで詳細に検討し,続いて,術後慢性痛の危険因子について,術前,術中,そして術後急性期から亜急性期にかけて論じます。これらを読むことで,術後慢性痛の現在の疫学的知見がほぼ網羅できる内容となっています。
さらに術後慢性痛の予測の可能性について,conditioned pain modulation(CPM)の最新の知見を示しました。CPMとは聞き慣れない言葉ですが,本稿を読まれれば,CPMが有益な検査であることが理解できることでしょう。
術後慢性痛に対する治療アプローチについては,さまざまな治療法の特徴や注意点について解説しています。また,慢性痛治療には心理社会的アプローチが重要です。一般の麻酔科医にはなじみの薄い分野ではありますが,症例を提示した,わかりやすい内容になっています。
最後に少し視点を変え,術後のオピオイド濫用の問題を取り上げました。米国の状況に触れることで,われわれが取り組む課題の重要性に改めて気づかされます。
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