快人快説
最近の悪性高熱事情—備えあれば,憂い無し
向田 圭子
1
Keiko MUKAIDA
1
1広島県立障害者リハビリテーションセンター 麻酔科
pp.573-582
発行日 2018年5月1日
Published Date 2018/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3101201131
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悪性高熱症malignant hyperthermia(MH)は遺伝性疾患である。主な原因遺伝子として,骨格筋小胞体(SR)にあるカルシウムイオン(Ca2+)放出チャネルである,1型リアノジン受容体遺伝子RYR1がよく知られているが,骨格筋細胞膜にある電位依存性L型Ca2+チャネル〔ジヒドロピリジン受容体(DHPR)〕のαサブユニット遺伝子CACNA1Sも原因遺伝子である1〜3)。これらの遺伝子変異により,骨格筋細胞内のCa2+の調節機構の潜在的な異常が確認されている。
MH素因者の骨格筋は,誘発薬物への曝露(まれに,過剰な運動および高温環境,ウイルス感染,精神的興奮など)により,SRからのCa2+放出が増大し,骨格筋細胞内のCa2+が持続的に上昇し,その結果,MHを発症する。
急激な体温上昇・高体温,原因不明の頻脈・不整脈・血圧変動,呼吸性・代謝性アシドーシス(過呼吸),筋強直や開口障害(咬筋強直),コーラ色の着色尿(ミオグロビン尿),SpO2低下,血清K値やミオグロビン,CKの上昇,異常な発汗,出血傾向などの症状のうち,いくつかが経時的に出現する。発症すると進行は急激なことが多く,体温が41℃以上になると死亡率は50%を超える。MHの特効薬であるダントロレンは,骨格筋細胞質内のCa2+を低下させ1,4),代謝亢進状態を是正する。
本稿では,日本麻酔科学会悪性高熱症管理ガイドラインWG作成『悪性高熱症患者の管理に関するガイドライン2016』5)(以下,『ガイドライン2016』)を踏まえて,悪性高熱の最近の状況を概説する。
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