当世 問はずがたり
別の穴のドッペルゲンガー
石黒 達昌
pp.299
発行日 2017年3月1日
Published Date 2017/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3101200813
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先日,文部科学省の局長の天下り問題が大きく報じられました。局長がどの程度の地位にあるのか,一般の方はご存じないと思いますが,いわゆるキャリアの場合,課長までは行くけれど,局長は難しいと言えばわかっていただけるでしょうか。任期も2年程度がせいぜいで,名誉職的な要素も強く,そこからはさらに狭き門なので,天下りの通過点になりやすい地位でもあります。天下りというより次の職場を見つけるといった感覚で,正直,あの程度のことが法に違反するという意識すら当事者たちには乏しかったのではないでしょうか。
ところで,国立大学医学部(今は独立行政法人)の場合,その地位があからさまに国家公務員であった時代でも,教授の天下りが問題になった記憶はないわけですが,およそ退官後の楽隠居例も存じ上げません。町工場の親方である教授職を天下の局長職と同列には論じられませんが,倫理的には同種の問題なのだと思います。「白い巨塔」が単純な悪対正義の図式にならないのも,定年後の就職先に腐心する東教授の姿ゆえ,です。
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