- 販売していません
- 文献概要
今回は,これまで以上に踏み込んだ実践的設問となっており,お答えいただいた各執筆者には心から御礼申し上げます。
主に,硬膜外や脊髄くも膜下血腫を念頭とした抗凝固薬使用中患者に対する区域麻酔のガイドラインはありますが,今のところ硬膜外感染・膿瘍についての有用な指針はありません。もちろん,針を刺入する部位に感染があれば禁忌になりますが,例えば,急性胆囊炎や虫垂炎のような白血球数,CRPそして体温が上昇している患者に区域麻酔を施行するかは迷うところであります。ペインクリニック外来に交通事故直後の傷病者は運び込まれてきませんが,時間が経過してその後遺症としての慢性疼痛を訴え続ける患者は多く紹介されてきます。ある意味,急性期の患者より対応が難しいかもしれません。ペインクリニシャンはその患者に関する各種公的保証による救済にも深くかかわることも多く,特に診断書の記載には注意が必要です。また,術後痛に対するフルルビプロフェン,アセトアミノフェンの使用は,地域によって差がありますが保険診療の壁が立ちはだかり有効な使用ができない状況も生じてまいりました。そして,たとえ患者のために医学的に正しい治療であっても,添付文書などさまざまな制約や各審査委員の思惑により“査定”されることもあり,手術麻酔のみならず,しばしばペインクリニック開業の大きな足かせになっている場合があります。現状においては各医師が審査支払機関側と根気強く交渉することが具体的解決策の一つであるかもしれません。そして,認知行動療法は慢性痛患者に対してその有効性は高く認められているものの,1患者に対する技術や費やす時間などが診療報酬上,あまりにも低く評価されているのは残念です。このことは運動療法などとともに学会レベルで対応していかなければならない最重要課題です。最後に,日本でも慢性疼痛に対するオピオイドの使用患者は増加し,その患者の海外への渡航は小さくはない問題です。オピオイドを処方している医師は,患者の渡航に際して,日本だけでなく目的国の法律や対応を理解し,厚生労働省の指針を基本に相当な注意を払わないといけないと考えます。
本特集が,多くの痛みの診療に従事する医師・医療従事者に有意義な情報を与えることを希望いたします。
Copyright © 2017, MEDICAL SCIENCES INTERNATIONAL, LTD. All rights reserved.