徹底分析シリーズ 続 痛み治療の素朴な疑問に答えます1
巻頭言
奥田 泰久
1
1獨協医科大学越谷病院 麻酔科
pp.105
発行日 2017年2月1日
Published Date 2017/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3101200769
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- 文献概要
2015年に特集した「痛み治療の素朴な疑問に答えます」の続編です。痛みの基礎から臨床まで,設問の中には執筆者を悩ますものもありましたが,それぞれ,非常に丁寧にわかりやすく,最新の情報を加えて答えてくれました。
痛みを難解にしている中心的存在は神経障害性疼痛でしょう。この原因究明に欠かすことができない動物実験は,これまでも多くの貴重な知見をわれわれに与えてきましたが,臨床との溝を埋めるという課題は残っています。神経障害性疼痛の臨床での定義はより複雑で,対する薬物治療の日本ペインクリニック学会の新しいガイドラインでは,オピオイドの長期の使用法がより詳細に示されました。そして,長年にわたり非がん性疼痛にも使用可能で安価なオピオイドであったペンタゾシンの役目は終わりつつあるようです。また,神経障害性疼痛の代表的な疾患である帯状疱疹後神経痛に対する神経ブロックの評価は明確ではありませんが,やっと日本人が開発した“水痘ワクチン”が日本でも認可されました。さらに,抗凝固薬内服中の患者に対する区域麻酔について,日本での初めてのガイドラインもできました。
大げさかもしれませんが,痛みとの戦いが新たな局面に入ったようです。しかしながら“痛み”,特に慢性疼痛(神経障害性疼痛など)の機序,診断および治療はまだまだ難解であり,素朴な疑問はなかなか尽きません。ですので,来月号へと本特集も続きます。
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