徹底分析シリーズ 痛み治療の素朴な疑問に答えます2
巻頭言
馬場 洋
1
,
奥田 泰久
2
1新潟大学大学院医歯学総合研究科 麻酔科学分野
2獨協医科大学越谷病院 麻酔科
pp.115
発行日 2015年2月1日
Published Date 2015/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3101200115
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- 文献概要
前月号と2回にわたって,痛み治療に関する素朴な疑問を取り上げてきた。今は情報収集が容易で,研修医でさえも自力で多くの問題解決はできる時代である。ただし,痛みの分野は研修医の素朴な疑問に答える文献がないことも多い領域である。専門家でさえうまく答えられない,むしろ専門家だからこそ本音で答えられないこともある。
末梢神経損傷後のAβ線維のsprouting説が今では完全に否定されていることに対して,「え?そうなの?」と思った上級医もいるのではないだろうか。Nature誌のような一流誌(一流誌だからこそ)に掲載された論文であっても,その後の検証に耐えられず,数年で消えていく学説もある。また,一流誌に掲載されても,臨床的なエビデンスと矛盾するため,疑問視されている学説もある。問題は研修医ではなく,ある学説が発表された後,それがどのように評価されているか知らない上級医かもしれない。
「動物実験では急性効果があるのに,ヒトでは効果発現までに時間がかかる」,あるいは「動物実験では鎮痛効果があるのに,ヒトでは効かない」など,基礎と臨床がなかなか融合しないことが痛み研究の特徴かもしれない。「動物とヒトは違うのだ」と単純に割り切るのではなく,そこには必ず何か理由があるはず,と一歩踏み込んで,若い研修医がこれらの素朴な疑問を大きく発展させてくれることを期待する。
最後に,回答しにくい疑問にも快く執筆していただいた先生方に心から感謝したい。
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