- 販売していません
- 文献概要
痛みは生理的感受性と心理的反応性が交差する複雑な主観的訴えである。同じ病態でも,個々の患者の痛みの訴えおよび治療に対する反応が大きく異なるのは,臨床でしばしば認められることであり,動物実験の結果が臨床で有益な情報としてしばしば認められないのは当然である。
最近の基礎研究,臨床研究において,痛みに関する機序の解明,診断,治療などの進歩は目覚ましいが,年々高まる根拠にもとづく医療(EBM)重視の傾向において,例えば薬物療法以外に医学的証拠が得られ難い痛みの治療法(神経ブロック療法,東洋医学的治療,理学療法,心理療法など)の対応について,何が正しくて何が過ちなのか,臨床の現場で各医師が抱く疑問は少なくないと考える。以前ある学会で,発表に関しての純粋な疑問を質問した若い医師に対して,著名な演者がかなり感情的に「そんな愚かな質問をするな」と言わんばかりに一方的に質疑応答を打ち切ったことがあった(筆者には質問は単純に核心に迫るものであったが,演者にはそれを議論することは自身の発表内容を否定することになると考えたように見えた)。臨床の現場においても,似たようなことが,きわめてまれだがいまだに生じているとの話を聞くことがあり,誠に残念である。
本徹底分析は,痛みの臨床および研究を開始したばかりの医師たちが,痛みに関して素朴に感じるであろう疑問に対して,その分野の専門家が参考になり得る回答を用意した。専門性の高い記述は避け,なかには現時点では明確にできないものもあるが,可能なかぎり丁寧な回答を示した。
本特集で一人でも多くの医師および医療関係者,特に素朴な疑問を容易に解決できない環境にいる方々が,痛みに対して少しでも理解を深め,知識を得られれば幸いである。
Copyright © 2015, MEDICAL SCIENCES INTERNATIONAL, LTD. All rights reserved.