徹底分析シリーズ 非がん性痛に対するオピオイド
オピオイドの乱用・嗜癖について—正しい知識が患者と社会を守る
松田 陽一
1
MATSUDA,Yoichi
1
1大阪大学大学院医学系研究科 麻酔・集中治療医学講座
pp.244-248
発行日 2015年3月1日
Published Date 2015/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3101200149
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日本の痛み治療の臨床において,オピオイドはこれまで周術期と進行がん患者のがん性痛(がん病変による痛み)治療におおむね特化して用いられてきた。その状況では,救急外来におけるペンタゾシン嗜癖(依存症)患者などの問題はあったものの,オピオイドの乱用や嗜癖の問題が大きくクローズアップされることはなかった。しかし,フェンタニル経皮吸収型製剤の非がん性慢性痛治療に対する効能追加が2010年に承認されたのを機に,オピオイドを用いた非がん性慢性痛治療が日本でも普及し始め,また,がん治療の進歩に伴いがんサバイバー人口が増加し,進行期から終末期のがん患者を主たる対象とした世界保健機関(WHO)方式がん疼痛治療法の枠から外れた「慢性痛を抱えたがん患者」が増加してきた。以上のような背景から,オピオイドによる痛み治療にかかわる医師にとって,オピオイドの乱用や嗜癖に関する知識をもつことは,今や必要条件である。これは,非がん性慢性痛患者やがん長期サバイバーには,術後急性期や進行期がん患者と異なる観点に沿って治療を行わなければ,オピオイドの乱用や嗜癖を引き起こす可能性があり得ることを意味する。しかし,オピオイド鎮痛薬の乱用や嗜癖に関する知識は,まだ十分に普及しているとはいえないのが現状である。
本稿では,オピオイドの乱用や嗜癖から患者や社会を守り,慢性痛患者に対して適正にオピオイド治療が行われるために必要な,乱用や嗜癖に関する基本的知識について述べる。
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