Japanese
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研究と報告
鎮痛剤乱用—オプタリドン嗜癖の8例について
Abuse of Analgetics : 8 Cases of Optalidon Addiction
竹内 知夫
1
,
広瀬 信行
2
Tomoo Takeuchi
1
,
Nobuyuki Hirose
2
1横浜市立大学医学部神経科学教室
2寿康会相模病院
1Dept. of Neurology & Psychiatry, Yokohama City Univ. School of Med.
2Sagami Mental Hospital
pp.1085-1092
発行日 1973年10月15日
Published Date 1973/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405202091
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I.はじめに
各種薬物の乱用の様態は,時代や社会情況の変遷とともに変化するものである。ことに,用いられる薬物の種類や使用法は,実にさまざまであって,時には奇想天外ともいうべき事態も起こりうる。周知のように,戦後のわが国では,覚醒剤の乱用が一世を風靡して,それに基づく重要な精神医学的ならびに社会的諸問題が提起された。それが法的規制によって,姿を消すかと思うと,新しい乱用の対象となる薬物が,つぎからつぎへと現われてくる。そこには,わが国の社会情勢に根ざすところが大きい面もあるが,同時に,乱用に陥る個人の生活史と性格が重要な関係をもつであろう。
ここで取り上げた薬物オプタリドンは,元来,鎮痛剤として,1929年スイスで開発され,わが国では昭和40年7月から発売されていた。いうまでもなく,薬局の店頭で,誰でもが入手できる状況にあったし,現在もそうである。オプタリドンが,いわゆる「ヤク遊び」の対象となったのは昭和43〜44年ごろからであって,それは各種の睡眠剤や精神安定剤の店頭販売が厳しく規制されはじめた時期に,大体において一致しているのである。元来オプタリドンには,快感を伴う酩酊状態が起こることは予見されていなかったが,それが,嗜癖の対象となり,乱用が目立ってきたのはここ数年来のことである。しかし,その成分をみると,コルポサンド(aminopyrinとallyl barbituric acidの複合体),アミノピリン,カフェインということであるから,人によっては少なくともbarbiturateの酩酊が惹起されることは,容易に考えられることである。
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