連載 ケースレポート
Scienceに掲載された論文のリトラクションにかかわった話—生データの前では,大教授も学部生も平等なのだ
横溝 岳彦
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1順天堂大学医学部 生化学第一講座
pp.988-989
発行日 2014年10月1日
Published Date 2014/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3101200028
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私は麻酔科医ではないが,縁あってLiSAの編集会議に参加している。臨床医学の現場を離れて長い私にとって,編集会議で活発に討論される麻酔現場でのトラブルシューティングの話は大変に刺激的で,あたかも自分が手術室にいるかのような錯覚にとらわれることもしばしばである。
先日の編集会議で,『Anesthesiology』に掲載されたある学術論文に対して疑義を訴えた体験記について話題になった*1。学術論文の内容は専門性が高く,追試実験を行ってその真偽を確認することは容易ではない。比較的実験条件のコントロールがしやすい生化学系の実験でも,論文に記載された実験条件を完全にトレースすることは難しい。ましてや,患者を対象とした臨床研究の条件を論文と完全に揃えるのは不可能であろう。
こうした討論のなかで,私自身の「Scienceに掲載された論文のリトラクションにかかわった」経験を紹介することになった。
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