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読者の多くは,泌尿器科手術では,良性疾患の前立腺肥大や初期の膀胱腫瘍に対して経尿道的なアプローチがまず選択され,前立腺癌や膀胱腫瘍が進展した際に行う次のステップとして,開腹術が選択されるという概念をもっていることだろう。そして,前立腺全摘術では,術者の死角となる部位が存在し,術中に突然の大量出血をきたし,輸血の対応に追われることも珍しくなかったのではないだろうか。日本では2000年半ばに導入されたロボット支援下の前立腺手術が登場したことで,この死角の問題が克服され,ほとんど出血をきたすことなく,安全に手術を行えるようになった。
また,筆者が入局したばかりの頃は,患者が70歳台だと,“お年寄りの手術”という印象を強くもったものだったが,今はさらに高齢化が進んでおり,70歳や80歳の患者は珍しくない。しかし,高齢であることに変わりはなく,それに伴う合併症への対策も無視できず,麻酔管理は術前評価が非常に大切になってきている。
前号に続く「泌尿器科手術」の第二部では,前立腺全摘術に対するアプローチとして,①脊髄くも膜下硬膜外併用麻酔,②硬膜外併用全身麻酔,③da Vinciを用いたロボット支援根治的前立腺全摘術を取り上げた。さらに,④膀胱腫瘍に対する膀胱全摘術+回腸導管を含めて,合併症を有する際の麻酔管理のあり方について,臨床現場での実際がリアルに語られている。
本症例検討では,従来の麻酔管理法の利点を温故知新という形で捉えて紹介いただき,さらにda Vinci手術の利点や問題点,慢性閉塞性肺疾患(COPD)を合併した際の評価の重要性など,日常の臨床にすぐに役立つ内容を提供していただいた。ぜひ,御一読いただければと思う。
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