症例検討 脊椎手術1
巻頭言
紙谷 義孝
1
1新潟大学医歯学総合病院 麻酔科
pp.277
発行日 2013年3月1日
Published Date 2013/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3101101776
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- 文献概要
脊椎は,脳と四肢をつなぐ神経線維の集合体である脊髄を入れるチューブであり,手術そのものを含めた脊髄への侵襲によって容易に傷害される,脆弱な組織である。そのため,気道確保の段階から,頸椎保護について考慮する必要がある。また,頸部の手術では,術野が気道と近接しているため,術後の気道確保にも気を配らなければならないし,後方アプローチの場合は必然的に腹臥位での手術となるため,腹臥位によるさまざまな障害(腹部圧迫による呼吸障害や,眼圧の上昇による術後の失明など)も考慮する必要がある。
多椎間にわたる脊椎固定術では,椎骨や硬膜外静脈叢からの出血がかさみ,大量出血につながる場合もあるので,周術期の輸血についても十分に予測し,準備しなければならない。一方,術中の神経学的評価に関しては,運動誘発電位(MEP)のモニタリングが一般的に行われるようになってきているが,MEPの測定を困難にする麻酔薬もあるため,その点も留意して麻酔法を検討する必要がある。
本症例検討では,2号に分けて,市中病院で一般的に行われる脊椎手術から,集学的治療を必要とする大掛かりな脊椎手術まで,脊椎手術を多く行っている病院から,最近のトレンドを紹介していただく。今月号では,頸部脊椎手術2症例について取りあげる。気道管理の方法や術後の気道確保で注意する点など,普段行っている管理が他院ではどのように行われているのか,気になっている麻酔科医のお役に立てば幸いである。
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