症例検討 硬膜外ができないときの術後鎮痛法
巻頭言
紙谷 義孝
1
1新潟大学地域医療教育センター・魚沼基幹病院 麻酔科
pp.33
発行日 2016年1月1日
Published Date 2016/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3101200473
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- 文献概要
硬膜外麻酔は,局所麻酔薬による強力な鎮痛作用だけでなく,交感神経抑制作用による血流増加作用をも有し,周術期深部静脈血栓症を低下させたり,患者予後を改善させるとされている。一方,凝固能が低下していたり,術前からの抗凝固・抗血栓療法が行われている患者では,脊柱管内での出血・血腫形成リスクが高く,硬膜外麻酔を避けるべきである,ということは麻酔科医であれば「いろはのい」と言える知識であろう。
硬膜外麻酔ができないときの術後鎮痛法については,初学者からベテランまで頭を悩ませていることの一つだと思う。今回の症例検討は,術後鎮痛法として硬膜外麻酔が頻用されることの多い症例での硬膜外麻酔ができない状況における鎮痛法がテーマである。冒頭に,アウトカムベースでの術後鎮痛のメリット,「硬膜外麻酔ができないとき」の具体的な状況について解説していただいた。そのうえで,肺癌,食道癌,肝癌という,侵襲の大きな手術での硬膜外麻酔が使えないときの術後鎮痛法の工夫について,各施設の特色も交えて論じている。最近では,メカニズムが異なる鎮痛法を組み合わせてより質の高い鎮痛を得ようとするmultimodal analgesiaの考え方が普及しつつあるが,各稿においてもそれが如実に表れている。硬膜外麻酔ができるときにも応用できる技術であるので,その点も考慮して読めば,より質の高い術後鎮痛が可能になるだろう。
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