徹底分析シリーズ デスフルラン1
日本でデスフルランが使用可能になったことの意義―新しい時代の麻酔になくてはならないものになれるか?
武田 純三
1
TAKEDA,Junzo
1
1慶應義塾大学医学部 麻酔学教室
pp.10-11
発行日 2013年1月1日
Published Date 2013/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3101101718
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●ルーツはエーテル麻酔
1846年,Mortonがマサチューセッツ総合病院で行ったエーテル麻酔の公開実験は,麻酔の歴史の第一歩であるが,麻酔のなかでも吸入麻酔薬の歴史の第一歩であったと言える。その後,吸入麻酔薬はハロタンの時代を迎えるが,1959年から1980年にかけて,Dr. Terrellと現在のBaxter Healthcare Corp.(バクスター社)が,優れた吸入麻酔薬を作りだすために,700ものフッ化化合物のなかから,エンフルラン,イソフルラン,セボフルラン,デスフルランなどを導き出した。しかし,デスフルランは沸点が低いこと,力価が低く大量を必要とし,高価となるために開発が遅れた1)。ところが,覚醒が早いという特徴が見直されて,カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)のEger Ⅱと安田信彦氏などの努力の結果,欧米では1992年より臨床使用が始まった2)。
デスフルランは,亜酸化窒素と同程度の血液/ガス分配係数を有しており,麻酔の導入,覚醒がすみやかであることが最大の特徴である。また,代謝を受けることがなく,二酸化炭素吸収剤により変性を受けないことも特徴である。バクスター社は,これらのデスフルランの特徴を生かせる肥満患者や高齢者での使用のキャンペーンを張り,すでに世界の多くの国で使用されている。
一方で,刺激臭があり,頻脈を起こし得ることも知られている。安田は,動物実験から臨床使用に至る時期に,一過性の血圧上昇と頻脈を観察しており,早い時期から循環器系への影響を懸念していた2)。
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