症例検討 出血/輸血するかもしれない患者
巻頭言
山崎 光章
1
1富山大学大学院医学薬学研究部 麻酔科学講座
pp.1307
発行日 2012年12月1日
Published Date 2012/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3101101703
- 販売していません
- 文献概要
手術中の出血に対する治療は,膠質液や循環作動薬を用いて適切な循環管理を行い,さらに出血量が多くなれば赤血球濃厚液(RCC),そして新鮮凍結血漿(FFP)や濃厚血小板(PC)を適切なタイミングで使用することが基本となる。また,「危機的出血への対応ガイドライン」は,大量出血に対応する際の大きな指針となっている。最近では,フィブリノゲン製剤や,凝固因子濃縮製剤であるクレオプレシピテートを早期に使用する方法も検討され始め,大量出血に対する標準的な治療が確立しつつあるのではないかと思わせる。
一方,近年,予備対応力の少ない高齢者や,ワルファリンを服用している患者が増加している。これらは,患者の個々の状態が異なるために,依然として出血に対する対応を困難にしている。
本症例検討では,出血や輸血が予想される患者に対して,術前の準備,麻酔方法の選択,そして輸血を行うタイミングをどう判断するかについて詳細に述べていただいた。大量出血は,麻酔科医の総合的な能力が試される課題である。個々の病院のマンパワー,設備やバックアップ体制などに違いはあるが,われわれプロの麻酔科医には,術後の患者の状態までをも考慮に入れた,術中の輸血療法が求められる。是非とも本症例検討を,今後の輸血戦略に役立てていただきたい。
Copyright © 2012, "MEDICAL SCIENCES INTERNATIONAL, LTD." All rights reserved.