徹底分析シリーズ ガスメディエータの未来
一酸化窒素(NO)吸入療法の可能性と未来―虚血再灌流障害に対する臓器保護効果に期待して
南嶋 しづか
1
,
武田 純三
1
Shizuka MINAMISHIMA
1
,
Junzo TAKEDA
1
1慶應義塾大学医学部 麻酔学教室
pp.1278-1283
発行日 2012年12月1日
Published Date 2012/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3101101697
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大気汚染物質の一つであり,いわゆる「毒ガス」である一酸化窒素(NO)は,なぜ「薬」になり得たのだろう?それは1991年,NO吸入が肺動脈圧を選択的に下げることが,ヒツジの肺高血圧モデルで報告されたことに始まる1)。その後,世界中で行われた多種多様な研究により,NO吸入の安全性や有効性が確立され,わずか8年後,NOは米国食品医薬品局により「新生児遷延性肺高血圧症の治療薬」として承認された。
NOに関する研究はさらに進み,近年,NO吸入が肺以外の臓器の虚血再灌流障害に対し,臓器保護効果を示すことが明らかになってきた。これは,NOが冠動脈再建術や臓器移植などの「薬」となって,予後を改善する可能性を示しており,臨床使用に期待が高まっている。
本稿では,NO吸入療法の臨床使用の実際と,新しい可能性について述べる。
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