徹底分析シリーズ ガスメディエータの未来
硫化水素(H2S)の基礎―臭い,危険と嫌わずにその多彩な作用の活用法が開発中
渋谷 典広
1
,
木村 英雄
1
Norihiro SHIBUYA
1
,
Hideo KIMURA
1
1国立精神・神経医療研究センター 神経研究所 神経薬理研究部
pp.1284-1289
発行日 2012年12月1日
Published Date 2012/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3101101698
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近年,NOとCOに次ぐ第三番目のガス性の生理活性物質として,硫化水素(H2S)が注目されている。H2Sといえば,臭くて(腐卵臭の主成分),危険(シアン化水素に匹敵する毒性)であることから,敬遠されがちな物質である。しかし,意外なことに,われわれの体内にはH2Sを産生する酵素が存在している。内因性のH2Sは,受容体,イオンチャネル,転写因子,酵素などを標的とし,神経伝達調節,平滑筋弛緩,細胞保護,抗炎症,インスリン分泌調節など,実に多彩な作用を示すことがわかってきた。
最近では,H2Sの医療応用を指向した研究が活発化しており,安全で効果的に使用するための投与法が模索されている。基礎研究の分野では,生体内で産生されたH2Sが,どのような挙動を示すのか,その貯蔵や放出のメカニズムが解明されつつあり,H2Sによる新たな生理作用も見出されている。
本稿では,H2Sの生理作用と薬理作用について,最近の基礎的知見を中心に概説する。
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