徹底分析シリーズ 痛みのバイオロジー
下行性制御:抑制と促進―バランスが崩れると慢性痛を引き起こす
小幡 英章
1
Hideaki OBATA
1
1群馬大学大学院医学系研究科 脳神経病態制御学講座 麻酔神経科学
pp.484-488
発行日 2012年5月1日
Published Date 2012/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3101101526
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
末梢に侵害刺激(痛み)が加えられると,その情報は一次感覚神経によって脊髄後角に伝えられ,さらに脊髄後角ニューロン(二次感覚ニューロン)によって上位中枢に伝えられて痛みと認識する。脊髄後角に入力された侵害刺激は,脊髄内に内在する,あるいは上位中枢から投射される痛みの調節機構(主に抑制系)によってさまざまな修飾を受ける。脳幹から脊髄後角に投射する抑制性の経路でよく知られているのは,ノルアドレナリン(NA)作動性下行性抑制系とセロトニン(5-HT)作動性下行性抑制系である。下行性抑制系は,さまざまな要因によって変化するが,その機能低下が神経因性疼痛に代表される慢性痛の持続にかかわっていると考えられている。
本稿では,痛みの動物モデルを用いた基礎研究の結果を提示し,神経因性疼痛においてNAおよび5-HTで作動する下行性抑制系は,どのように関与しているのかを考える。
Copyright © 2012, "MEDICAL SCIENCES INTERNATIONAL, LTD." All rights reserved.