昨日の患者
崩れたセーフティネット
中川 国利
1
1仙台赤十字病院外科
pp.1648
発行日 2008年11月20日
Published Date 2008/11/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407102392
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この世で最も大事なものは何であろうか.人によってそれぞれ見解の相違があるが,突き詰めれば自分の生命と家族の幸せではないだろうか.自己の生命をも省みずに,家族のために働き続ける人も存在する.
40歳代半ばのSさんが下血を主訴に来院した.精査を行うと直腸癌が周囲臓器に浸潤しており,さらに肝臓にも転移していた.そこで,直腸前方切除を行うとともに,癌化学療法を勧めた.しかし,なぜかSさんは癌化学療法を拒否し,外来にさえ来なくなった.8か月後,腎不全で再び来院した.CT検査を行うと両側の水腎症をきたしていた.そこで,超音波ガイド下に腎外瘻を行い,腎不全は治癒した.再度,癌化学療法を勧めたが,治療を拒否して早期に退院した.
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