症例検討 癌治療と麻酔
巻頭言
本田 完
pp.265
発行日 2012年3月1日
Published Date 2012/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3101101480
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- 文献概要
癌に特別な麻酔管理はあるのか。特別な機器を使用したモニタリングは必要か。術後呼吸管理は必須か…?
本症例検討は,先月号の徹底分析シリーズ「最近の癌治療」とワンセットの臨床編である。麻酔科医だけでなく,あえて内科医,外科医の諸氏にも検討していただいた。近年,術前に補助化学療法や放射線治療が行われた症例の癌根治手術や,鏡視下手術例が増えている。また,患者の高齢化が進み,術前合併症も多様になっている。安全な手術は,関連各科の風通しのいい“場”に生まれるのであろう。
高価な各種モニターや,何台ものシリンジポンプやパソコンに囲まれた,コックピットさながらの手術場で麻酔をする有能な若き麻酔科医を見ると,浅学な老人麻酔科医の小生は,心配になる。「木を見て森を見ず」「術野を見ずしてモニターを見つめる」と。高価なモニターも,所詮は人間という高等動物が開発したものである。モニターを賢く使うのも人間,暴走させるのも人間である。そう,電気を作る機械を作るのも人間,暴走させるのも人間,医療とて同じだろう。
逆説的だが,ここは女性の脛に見とれて神通力を失った久米仙人になりたいものである。もちろん,ここでいう神通力はモニター類だ。だいじなのは生身の人間なのである。
提示した症例のなかには,仮想ではなく,現実の症例も含まれている。本稿が風通しのいい周術期管理の一助になることを願う。
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