徹底分析シリーズ 素朴な疑問―これにて35件落着!
巻頭言
落合 亮一
1
1東邦大学医学部 麻酔科学第一講座
pp.451
発行日 2011年5月1日
Published Date 2011/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3101101227
- 販売していません
- 文献概要
私は寿司屋が好きだ。
磨き上げられたカウンターに座り,無駄のない店主の所作を眺めるのは大変に気持ちがよい。
寿司の握りかたは,インターネットで検索できる。しかし,無造作に引く包丁の動きや客の好みに配る気遣いこそが寿司屋の醍醐味だ。
プロの仕事は,一目見るだけでアマチュアとは格段に異なる。そこには確かな技術に支えられた確実な仕事と,膨大なデータベース(頭の中のことだが)に裏打ちされた気配りがある。このように何万回,何十万回と繰り返され身体化した技術こそが,プロとアマチュアを区別するのだろう。
私が研修医だった時代に,麻酔科スタッフが躊躇なく無意識にも見える手つきで点滴をとったり,気管挿管するのを羨望の眼差しで見つめていたことを憶えている。このように身体化した医療行為は,文章化や標準化が難しい分野でもあり,教育の側面ではマンツーマンでの教育が必要とされる(いわゆる,tacit knowledge)。
先輩スタッフの一挙手一投足を眺め,いつかは自分のものにしようと考えた研修医時代は遥か昔のことだが,この“素朴な疑問”シリーズは当時感じた疑問そのものといえる。単なる知識だけではなく,プロの持つコツや工夫についても楽しんでもらいたい。
Copyright © 2011, "MEDICAL SCIENCES INTERNATIONAL, LTD." All rights reserved.