徹底分析シリーズ PCA再考
PCA装置をとりまく最近の事情―PCA装置にまつわる薬物インシデント報告の十分な集積と原因解析が課題
津崎 晃一
1
TSUZAKI, Koichi
1
1慶應義塾大学医学部 麻酔学教室
pp.782-786
発行日 2011年8月1日
Published Date 2011/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3101101309
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周術期や産科領域,救急領域,さらには緩和医療を含めて,有効で安全な鎮痛法に対する要求が高まるとともに,ここ10年ほどで発展してきた新たな鎮痛薬や薬物投与システムは,その内容を充実させつつある。
術後鎮痛を例に挙げれば,機械式あるいはディスポーザブル式のPCA装置を利用した静脈内自己調節鎮痛(IV-PCA)あるいは自己調節硬膜外鎮痛(PCEA)が代表的な鎮痛法として一般化し,術後回復の促進や患者満足度の向上,在院期間の短縮,医療コストの低減といった利点を生んでいる。
特に,IV-PCAは,PCEAに比較して鎮痛の質がやや低下する場合があるが,硬膜外カテーテル挿入などの麻酔科医以外には困難な技術を必要とせず,モルヒネやフェンタニルなどの強オピオイドの血中濃度を患者の必要に応じて個々に調節できる点で,優れていると言えよう。
しかしながら,PCAの安全性については,薬物インシデント報告が少なからず認められ1),患者リスクがPCAの導入により3.5倍以上に増す2)との報告さえ存在する。そこで,本稿では,PCA装置を含む輸液ポンプ全般の最新事情について,主に患者安全の立場から述べる。
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