症例ライブラリー IV-PCA:ピットフォールからのリカバリー
PCAボタンを押しても痛みがなくならない
川西 良典
1
,
田中 克哉
1
Ryosuke KAWANISHI
1
,
Katsuya TANAKA
1
1徳島大学大学院医歯薬学研究部 麻酔・疼痛治療医学分野
キーワード:
フェンタニル
,
モルヒネ
,
効果部位濃度
,
内臓痛
,
多角的疼痛管理
Keyword:
フェンタニル
,
モルヒネ
,
効果部位濃度
,
内臓痛
,
多角的疼痛管理
pp.826-829
発行日 2024年9月1日
Published Date 2024/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3101203021
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■症例
55歳の男性。身長180.5cm,体重93.1kg。特に併存疾患はなかったが,20歳から本疾患診断時まで20本/日の喫煙歴があった。
胸部食道癌に対して,ロボット支援下食道癌手術が予定された。硬膜外麻酔併用全身麻酔を予定していたが,硬膜外カテーテルの挿入ができず,フェンタニルの経静脈的患者自己調節鎮痛(IV-PCA)および術野から局所浸潤麻酔で術後疼痛管理を行う方針に切り替え,全身麻酔を導入した。
術中にフェンタニル500μgを投与し,手術終了3時間前からフェンタニル1500μg+生理食塩液70mL,計100mLを2mL/hrで持続投与を開始した。閉創時にフルルビプロフェン アキセチル50mgおよびアセトアミノフェン1000mgを投与した。手術終了時に胸部および腹部の創に,ロピバカイン150mgを局所投与した。
手術時間は9時間で出血は少量,手術終了時の血行動態・酸素化とも問題なく覚醒させ抜管した。抜管後に疼痛の訴えがあったため,フェンタニルを50μgずつ,計150μg投与した。安静時痛が自制内になったことを確認し,PCAのボーラス投与量は1mL,ロックアウト時間は20分として集中治療室に入室した。
翌日の回診の際に「痛がっていてどうしようもない。(PCAのボーラス)ボタンを押しても痛みが緩和せず,離床できないで困っている」と担当看護師に告げられた。
さて,あなたならどうする?
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