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Anesthesiology
Editorial:
Wrigge H, Pelosi P. Tidal volume in patients with normal lungs during general anesthesia : lower the better? Anesthesiology 2011 ; 114 : 1011-3.
Article:
Sundar S, Novack V, Jervis K, et al. Influence of low tidal volume ventilation on time to extubation in cardiac surgical patients. Anesthesiology 2011 ; 114 : 1102-10.
急性呼吸促迫症候群(ARDS)や急性肺傷害(ALI)の人工呼吸において,1回換気量を6mL/kgと少なめにする肺保護戦略をとることにより,患者予後が改善することが示され,ARDS/ALI患者の一般的な換気法となっている。しかし,肺傷害がない患者の手術や集中治療における人工呼吸で,同様の肺保護戦略が有効かについては議論がある。
心臓手術(特に人工心肺を用いる場合)では炎症反応が惹起され,機械的肺傷害も起こりやすいと考えられる。Sundarらは人工心肺を用いる予定心臓手術患者において,無作為に10mL/kg(対照群)あるいは6mL/kg(低1回換気量群)の1回換気量を用いた人工呼吸を,手術中および集中治療中に用いることにより,抜管時間が影響されるかについて検討した。約半数が冠動脈バイパス術,約4分の1が弁形成・置換術であった。対照群(74名,平均年齢66.5歳)では,術中および術後の1回換気量を10mL/kg,呼吸数を12.6±2回/minとした。低1回換気量群では,1回換気量を6.2mL/kg, 呼吸数を17.6回/min(術後は17.1回/min)とした。いずれの群も,吸入酸素分画は1.0とした。人工呼吸時間の中央値は,対照群で10.7時間,低1回換気量群で7.5時間であり有意差はなかった。挿管後6時間で人工呼吸が行われていなかった患者の割合は,対照群で20.3%であったのに対し,低1回換気量群では37.3%と有意に高かった。集中治療室入室後8時間までに抜管されていたのは,対照群で31.1%であったのに対し,低1回換気量群では53.3%と有意に多かった。再挿管が必要であった患者は,対照群で9.5%であったのに対し,低1回換気量群では1.3%と有意に少なかった。集中治療室滞在期間は両群間で差がなかった。
この研究からは,肺傷害はないが肺傷害を起こすリスクが高い心臓手術を受ける患者には,ARDS/ALIにおける人工呼吸と同様に,少なめの1回換気量のほうが肺保護的であることが示唆される。
さて,あなたは肺障害がない一般手術患者において,1回換気量をどのように設定しますか?(稲田 英一)
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