徹底分析シリーズ 術後回復力増強(ERAS)プロトコール
麻酔科医からみたERAS:術後管理―既成の術後管理法の考えにとらわれない!
佐藤 哲文
1
,
高橋 徹
2
SATO, Tetsufumi
1
,
TAKAHASHI, Toru
2
1岡山大学病院 麻酔科蘇生科(現:国立がん研究センター中央病院 麻酔科)
2岡山県立大学保健福祉学部 看護学科
pp.966-969
発行日 2010年10月1日
Published Date 2010/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3101101040
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従来は,比較的大きな侵襲の手術後は腸管機能やその他の臓器機能も低下し,その機能が術前の状態に回復するには数週間を要するため,例えば腸切除術であれば,吻合部への負荷を軽減するため,少なくとも数日間は絶飲食状態を保つ管理が行われてきた。しかし,Kehletら1)がこうした従来の管理法は術後の機能回復を遅らせるばかりでなく,むしろ有害であると発表して以来,欧米,特にヨーロッパを中心に術後管理の考え方が変わってきている。彼らは術後回復力の強化に特に重要な要素として,術後鎮痛,早期経口摂取開始,早期離床の三つを挙げている2)(図1)。
しかし,単にこれらを術後に強化すれば機能回復が促進されるわけではない。図2に示されているような多くの要素が早期回復には関与しており,術前管理,術中管理も含めた,一連の流れのなかで術後管理も行うことで,このプログラムが機能する。本稿では,術前管理,術中管理が早期回復力強化プロトコールに沿って行われた患者の術後管理をいかにすべきかについて概説する。
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