徹底分析シリーズ 遺伝子多型と麻酔
麻酔科医のための臨床遺伝学:遺伝的多型とは何か?
新川 詔夫
1
NIIKAWA, Norio
1
1北海道医療大学
pp.738-743
発行日 2010年8月1日
Published Date 2010/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3101100991
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多型polymorphismという用語は,多くの“poly”と形態“morph”に接尾語“ism”が付いた合成語であり,本来は集団のなかでの形態や表現型の多様性を意味した。例えば,4種の表現型を示すABO血液型は最も身近に実感できる多型であろう。分子遺伝学の進歩によって,ゲノム領域・遺伝子の塩基配列の違いにもとづく遺伝子型の多様性を広く遺伝的多型genetic polymorphismという用語で表すようになった。
一般的に遺伝的多型は,集団中で1%以上の頻度で存在し,代々メンデル遺伝形式で伝達され,自然選択上個体の生存に中立的な塩基配列の違いをさす。頻度が1%未満のときレアバリアントrare variantと呼ぶが,必ずしも厳密に区別されていない。レアバリアントは常染色体劣性遺伝病の保因者の変異アレルも含む。ゲノム上の位置が確定している多型は,疾患座や未知遺伝子局在のマーカーとなる。つまり,未知の場所へと導く標識に相当するものである。多型マーカーは,疾患座や形質座との連鎖を利用することで責任遺伝子の場所の特定が可能である。
本稿では,DNA多型の種類,応用,および臨床的意義などについて概説する。
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