今月の主題 唾液と汗
技術解説
唾液成分の遺伝的多型
池本 卯典
1
Shigenori IKEMOTO
1
1自治医科大学人間生物学,法医学教室
pp.952-960
発行日 1986年9月15日
Published Date 1986/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542913060
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古い歴史を有する唾液中の血液型物質を指標としたいわゆる唾液の血液型,それに,唾液蛋白質,唾液酵素の遺伝的変異を含めて広義に唾液遺伝標識すなわち唾液型と呼びたい.唾液蛋白質や酵素にも遺伝的変異の存在することが証明されてから10年余,その間に10数種類の唾液型は開発され,赤血球型,白血球型,血清蛋白質型,血球酵素型,血小板型などに次ぐ第6の遺伝標識としてようやく市民権を獲得しようとしている.唾液の採取は,採血のように施行者に資格を必要とせず,生体侵襲もなく,遺伝学的調査資料として絶好の試料である.また,最近は糖尿病,Sjörgren症候群などの患者唾液中にその疾患を反映する物質の分泌するなど,臨床病理学領域の検査対象として利用できる萌(きざし)もみられる.唾液型研究の進展とともに,今後こうした臨床応用でも活用されるよう,その発展を願ってやまない.
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