アイソエンザイム・4
遺伝的多型現象
植田 信太郎
1
,
尾本 恵市
1
1東京大学理学部人類学
pp.435-439
発行日 1981年4月15日
Published Date 1981/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542911212
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
遺伝的多型現象とは
遺伝的多型現象(gcnctic polymorphism)とは,同一の繁殖集団内に遺伝的に異なる二つ以上の型が共存する現象であり,性的2型(scxual dimo-rphism)も広義には含まれるが,一般には狭義に"正常な同一集団内で,ある遺伝子座に対立遺伝子が反復突然変異では説明できないほど高い頻度で存在する現象"であると定義されている.普通,最も汚通な対立遺伝子の頻度が99%を越えない場合,すなわちその他の対立遺伝子の頻度の合計が1%を越えれば,その遺伝子座は多型的であると言える.したがって,これよりはるかに頻度の低い酵素異常症などの遺伝病は除外されている.
遺伝的多型を示す形質には,例えば抗原抗体反応により検出される赤血球抗原型(血液型)や白血球抗原型(HLA),電気泳動法による赤血球酵素型や血清蛋白型,その他,耳垢型やINH代謝型など,数多く知られているが,ここでは電気泳動法により検出さねる酵素の遺伝的多型について述べる.すなわち,国際純止応用化学連合一国際生化学連合(IUPAC IUB)の生化学用語命名委員会により,"アイソザイムの呼称は,多様性を有する酵素群のうち,遺伝的に決定された一次構造上の違いを示すものに用い,修飾による酵素の多様性に対しては用いない"ことが勧告されているが,ここでは更に,その中の一つのカテゴリーである"同一構造遺伝子座における遺伝的変異によるアイソザイム"の中でも特に,電気泳動法で検出される遺伝的多型現象を示すものについて概観する.
Copyright © 1981, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.