徹底分析シリーズ セボフルラン
吸入麻酔薬の歴史におけるセボフルランの位置づけ
風間 富栄
1
Tomiei KAZAMA
1
1防衛医科大学校 麻酔学講座
pp.400-405
発行日 2009年5月1日
Published Date 2009/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3101100643
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薬理学の進歩とともに,安全な揮発性麻酔薬を求めて開発に拍車がかかったのは1950年以降のことであり,この頃が麻酔の近代化の始まりといってよい。その後,50数年の間で合成され麻酔作用の有無などを試験された薬物は数百以上にのぼるが,臨床使用するまでに至った麻酔薬は10種類に満たない。新しい麻酔薬開発に当たっては,過去の麻酔薬の臨床での不具合に学び,その欠点をなくす方向で開発が進んで行った。この観点からすると,セボフルランは,新薬開発の方向に完全に逆行する麻酔薬であった。
開発元である米国では,ボランティアに使用した第Ⅰ相試験が実施されたのみで,セボフルランの長所も短所も明解にされないまま,事実上,米国での開発は中止され,見捨てられた。その後,臨床への応用を目指した開発は日本に移るわけだが,現在では吸入全身麻酔の90%以上の症例にセボフルランが使用されるまでに認められ,全世界で1000万例以上の症例に使用されるに至った。
イソフルランは当時,代謝率の面で究極の吸入麻酔薬として臨床の現場に出てきたが,代謝率だけでなく,臨床でこれまであまり注目されなかった血液/ガス分配係数を含めた臨床での使い勝手のよさの重要性をセボフルランは教えてくれたように思う。これは最近の静脈麻酔薬,筋弛緩薬でも同様の傾向であり,このセボフルラン開発の成功は,新しい麻酔薬の開発の方向性の先駆けになったといえる。
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