徹底分析シリーズ セボフルラン
コラム:なぜ,セボフルランを日本で開発することになったのか
寺谷 祐一
1
Yuichi TERATANI
1
1丸石製薬株式会社 事業戦略室(元開発部)
pp.444-445
発行日 2009年5月1日
Published Date 2009/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3101100652
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●開発のきっかけは…
丸石製薬は1888年に創立し,「ガレヌス製剤」などの日本薬局方医薬品を製造販売しておりました。その丸石製薬が,「なぜ,セボフルランを開発することになったのか」,不思議に思われる方も多いことでしょう。
丸石製薬が麻酔薬を手がけるきっかけとなったのは,殺菌消毒剤の開発を手がけたことによるものであり,1978年,わが国最初のB型肝炎ウイルスにも有効な化学的滅菌・殺菌消毒剤(医療器具・機器・装置専用)「ステリハイド」,1985年,わが国最初の速乾性擦拭手指消毒剤「ウエルパス」*1をそれぞれ発売したことがきっかけであります。
特に,ウエルパスは,手術室やICUでの医療従事者の手指消毒に使用するということもあって,手術部やICUの先生方と懇意になる機会ができました。ちょうどその頃(正確には,1982年5月)に,Travenol社より米国の第Ⅰ相試験で頓挫している全身吸入麻酔薬「セボフルラン」のライセンスの話が持ち込まれました。
丸石製薬にとっては麻酔薬はまったく未知の領域であったため,ウエルパスでご指導いただいた浜松医科大学の当時の手術部長で,麻酔科教授の池田和之先生にセボフルラン開発の可能性について相談いたしました。Travenol社から入手した資料のなかには,①血液・ガス分配係数が1より小さいこと,②導入・覚醒が速く清明であること,③無刺激性であること,④エピネフリン反応性が小さいこと,などがセボフルランの特徴であることが示されておりました。その内容を池田先生がご覧になって大変興味を示され,浜松医科大学にて動物実験をお願いすることになりました。
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