症例検討 慢性心不全患者の麻酔
心不全患者の術前内科コンサルトのポイント
宇野 漢成
1
Kansei UNO
1
1東京大学医学部附属病院22世紀医療センター コンピュータ画像診断/予防医学講座
pp.246-249
発行日 2009年3月1日
Published Date 2009/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3101100611
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心不全とは,心臓が生理的需要に見合うほどの血液を送り出せないか,または,その分の血液を送り出すために高い充満圧filling pressureを必要とした状態である。理論上,前者が収縮不全,後者が拡張不全と大雑把に分けられるが,収縮と拡張が同じレールでの往復の関係であり,収縮性心膜炎のような特殊な状況を除けば,両者が密接に関連している(すなわち,収縮障害と拡張障害が併存する)。つまり,収縮と拡張の指標を総合的に評価することが重要である。さらに,病態の表現型も左心不全,右心不全,両心不全があり,心不全というときに,上記の病態のどれに当たるかを考えなければならない。
心不全患者の術前評価は,手術のリスク,麻酔のリスク,基礎心疾患の特徴などを総合的に判断する必要がある。循環器内科医はよく術前評価の相談を受けるが,実際に麻酔の経験を持った循環器内科医はわずかで(筆者も麻酔の経験がまったくない),教科書の知識で答えている場合がほとんどである。また,大病院では,自分が術前評価した患者の手術(麻酔)の結果が自分にフィードバックされることも少ないため,循環器内科医が麻酔に関する知験が蓄積されにくい構造にもなっている。
今さら麻酔科医に向かって「心不全既往歴のある患者や心機能の悪い患者は高リスクだ」と言うのは,釈迦に説法である。本稿では,内科医が術前評価で何を検査しているのか,検査のレポートをどう読むのか,基礎心疾患によって心不全患者が手術を受ける場合に起こりえる血行動態の変化を中心に述べる。また,具体例を挙げて,筆者が術前評価に注目する点を記述し,麻酔科医の批判を仰ぎたい。
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