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●小児は1号液という伝統は50年前の論文から
麻酔科医として研修を始めた頃,先輩医師から「周術期の輸液に関し,大人は細胞外液補充液を使用し,小児では1号液(メモ1)を使う」ということを教わり,今まで何の疑問も持たずに,その教え通りに輸液管理を行ってきた。しかし,実際にどのような根拠から,そのような輸液方法に至ったのかを調べてみたがよくわからない。そこで,手当たり次第,周りの麻酔科の先生に「1号液を選択するのはなぜですか?」と質問してみたが,明確な回答は得られず,彼らも指導医からそのように教わったという回答が大多数を占めた。以下のような根拠(迷信?)がその背景にあるのではないかと推測した。
①小児,特に乳児は腎機能が未熟なためにうまくナトリウムを排泄できない。そのため高ナトリウム血症を招く恐れがある。
②小児は低血糖になりやすく,糖を添加した輸液を用いたいが,以前は糖を含む細胞外液補充液がなかったため,その名残りで糖を含んだ低張液が漫然と用いられ続けている。
現在の輸液に関する根拠として,最も根底にあるのは,50年ほど前に発表されたHollidayとSegarの論文1)であろう。彼らは,小児の維持輸液に関し,必要な水分量と電解質の量を推定,必要電解質はナトリウムが3mEq/dL,カリウムが2mEq/dLとした。それが,現在われわれが日常的に用いている維持液,3号液の組成の由来となっている。
その後,Berryら2)により,周術期輸液の考え方が示され,輸液を術前の欠乏量(deficit),維持輸液(maintenance),そしてサードスペースと呼ばれる血管外喪失や出血などに対する補充輸液(replacement)の三つに分けられた。理論的に考えると前二者に対しては維持輸液を,後者に対しては細胞外液補充液を投与するのが理想であろう。しかし,実際の臨床麻酔においては上記のことを考慮して2種類の輸液を投与するのは煩雑である。
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