特集 栄養療法
【コラム】バクテリアルトランスロケーション―概念の変遷と最新の考え方
岡本 耕一
1
,
長谷 和生
1
,
小野 聡
2
Koichi OKAMOTO
1
,
Kazuo HASE
1
,
Satoshi ONO
2
1防衛医科大学校 外科学講座
2防衛医科大学校 防衛医学研究センター 外傷研究部門
pp.524-529
発行日 2011年7月1日
Published Date 2011/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3102100073
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■バクテリアルトランスロケーションの概念の変遷
1979年にBergとGarlington1)は,バクテリアルトランスロケーションbacterial translocation(BT)を「消化管内の生菌が腸上皮を通過して粘膜固有層に至り,さらに腸間膜リンパ節や他臓器へと移行すること」と定義した。これは無菌領域に生菌が侵入した事実から提唱された概念であったため,死菌やエンドトキシンなどの毒素の体内への流入は,厳密には含まれていなかった。しかしながら,消化管内にはエンドトキシンをはじめとする大量の細菌性因子が存在し,また,エンドトキシンは微量であっても,生体反応に重要な影響を及ぼすことから,死菌やエンドトキシンのtranslocation(移行)も決して無視することはできない。このような観点から1990年,Alexanderら2)はmicrobial translocationという「生菌だけではなく死菌やエンドトキシンのような微生物による産物の生体内への移行」もBTの概念である,と提唱した。
さらに最近では,BTによる病態への影響を評価する際には,細菌やエンドトキシンの腸管粘膜への侵入に伴って腸管関連リンパ組織もしくは腸間膜リンパ節などで産生されるサイトカインなどの各種メディエータの動態も考慮すべき,との考えも提唱されている3)(図1)。
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