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今月の主題 胃潰瘍癌の考え方
主題
胃潰瘍癌―考え方の変遷
Canceration of Gastric Ulcer
村上 忠重
1
T. Murakami
1
1東京医科歯科大学第1外科
pp.561-564
発行日 1976年5月25日
Published Date 1976/5/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403107229
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胃潰瘍が先行し,それが癌化したと考えられる癌性潰瘍を潰瘍癌Ulcuskrebsと呼ぶ.
もともと胃癌は他の癌と同じように,先天性の迷芽がもとになって発生すると考えられていた.後になって迷芽は迷芽でも,後天性に生じた迷芽が問題になるようになった.やがて迷芽説の影がうすれ慢性刺激説が誕生した.その慢性刺激説の一現象として,胃癌においては慢性潰瘍癌化説が生れた.潰瘍の辺縁には慢性の刺激がいつも働いていると考えられたからである.それを組織学的に証明した(と考えた)のがHauserである.Hauserはすでに1890年頃,大きな慢性潰瘍の辺縁の一部のみが癌化している例に遭遇(組織学的に証明)して報告しているが,その時にはまだはっきりとは潰瘍癌化説を打出してはいない.1926年Henke und LubarschのHandbuchの中で,彼は初めて慢性潰瘍が癌化しうるとし,その組織学的証拠として,潰瘍底の固有筋層が断裂し,できればそれが潰瘍底表面にむけて切れ上っており(今の言葉でいえばUl-Ⅳの潰瘍が存在しており),癌はその辺縁のみに存在し,潰瘍底には全く存在しないときに,先行した慢性潰瘍が癌化したと考えてよいと主張した.
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