徹底分析シリーズ 周術期の輸液管理
麻酔中の輸液管理:restricted fluid therapy
山蔭 道明
1
,
田村 岳士
1
Michiaki YAMAKAGE
1
,
Takeshi TAMURA
1
1札幌医科大学医学部 麻酔学講座
pp.20-23
発行日 2009年1月1日
Published Date 2009/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3101100563
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
生物(ヒト)は,ホメオスタシス(恒常性)をもっている。つまり,生体の内部や外部の環境因子が変化しても,生体の状態を一定に保つ能力をもっているわけである。手術中の輸液管理でいえば,ある程度の心機能と腎機能が保たれていれば,われわれ麻酔科医が多少過剰にあるいは過少に輸液を行ったとしても,患者の予後には大きく影響しないのかもしれない。しかし,それが大手術であったり,長時間手術であったらどうだろうか。例えば,20時間にも及ぶ開腹手術後に腸管浮腫をきたし,閉腹できなかった経験をおもちではないだろうか。これは,術者の腸管操作によるものかもしれないが,われわれ麻酔科医の輸液管理でコントロールできるのかもしれない。ある麻酔科の先生は,ご自分で手術を受けられ,術後に3kgの体重増加と顔面浮腫で大変辛い術後を経験されたということである。回復後,ご自分の麻酔記録を見られたそうだが,漫然と晶質液が投与されていたのを見て愕然としたそうである。
最近,restrictive fluid therapyという考え方が出てきた。この方法を用いると術後のアウトカムにもよい影響を与えるといわれている。本稿で,その考え方を学んでみよう。
Copyright © 2009, "MEDICAL SCIENCES INTERNATIONAL, LTD." All rights reserved.