徹底分析シリーズ 周術期の輸液管理
術前の輸液管理:周術期全体のなかでの術前を考えよ
石原 弘規
1
,
廣田 和美
1
Hironori ISHIHARA
1
,
Kazuyoshi HIROTA
1
1弘前大学大学院医学研究科 麻酔科学教室
pp.2-5
発行日 2009年1月1日
Published Date 2009/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3101100559
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麻酔導入は体液が過不足ない状態で施行するのが望ましいが,実際には術前経口摂取制限(NPO)や手術患者の病態による体液量過不足や電解質異常が存在する。特に合併症を有する高齢手術患者が増えた最近ではこの傾向が著しく,術前の輸液管理で可能なかぎりこの異常を是正しておくことが肝要である。一方,近年は術前NPOによる絶水時間が以前に比べると短縮される傾向にあるが,1日の手術件数が増え,各症例で麻酔開始時刻があらかじめ予測できないことも多く,各患者本位のきめ細かい術前NPOは不可能になることもある,と思われる。この意味でも術前輸液管理は大切である。術前輸液の目的は,①NPO時間による脱水是正,②各患者固有の病態による体液異常の是正,③麻酔導入時の低血圧予防,④術後回復促進などがある。術前輸液はこれらの要素を考慮して施行する必要がある。
本稿では,術前体液バランスの把握法を含め,麻酔科医としてどのように考えるか,私見を交えて術前輸液に対する考え方を概説する。
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