徹底分析シリーズ 周術期の輸液管理
巻頭言
山蔭 道明
1
1札幌医科大学医学部 麻酔学講座
pp.1
発行日 2009年1月1日
Published Date 2009/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3101100558
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- 文献概要
輸液管理の指標となるものに,循環動態や尿量がある。必要であれば中心静脈カテーテルや肺動脈カテーテルを挿入し,管理する。しかし,手術侵襲が大きくなるに従い,これらの指標だけから輸液管理をするのが限界であることも,われわれは日常的に経験している。一方,患者,あるいは担当外科によって術前の輸液管理が大きく異なっていることも,われわれの周術期輸液管理を難しくしている。硬膜外麻酔を行ったり,あるいはレミフェンタニルで麻酔導入を行ったとき,何らかの対応を迫られるほど,循環抑制は術前の脱水が原因ではないのか?そうだとすれば,その時にまだ出血もしていないのに大量の輸液を行ってもいいものか?また,そのようなときは,どのような輸液剤が適切であろうか?これに関しても明快な結論はないように思う。米国麻酔科学会からガイドラインが出されたように,固形物の摂取はともかく,飲水制限をわれわれは厳しくしすぎていないか?さらに,われわれの周術期管理を難しくするものに,“サードスペース”という概念がある。開腹術など腸管の操作が加わる手術では,このサードスペースも考慮し,輸液を十分に行うことになっている。一方で最近,循環変動を考慮し,人工膠質液をうまく利用することでアウトカムが改善する研究も報告されている。
本特集では,周術期,特に術前と術中の輸液管理についてエキスパートな麻酔科医に登場していただき,EBMにのっとった輸液管理についてご説明いただいた。今回はその前編として,周術期の輸液管理を経時的な流れで企画してみた。この特集が,明日からの輸液管理に役立ち,手術を受けられる患者のために少しでも貢献できれば,企画者として望外の喜びである。
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