症例検討 気道確保が困難な症例
上顎腫瘍再発に伴う気道管理困難症例:ASA-DAAとAAAによる事前検討でリスクを軽減
上農 喜朗
1
Yoshiro KAMINOH
1
1兵庫医科大学医学部 麻酔科学教室
pp.1010-1014
発行日 2007年10月1日
Published Date 2007/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3101100443
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症例
59歳の女性。上顎腫瘍摘出術後,頬部(再建皮弁内)再発に対して切除術を予定している。
【現病歴】3年前,右頬部に疼痛を感じ,近くの耳鼻科受診。急性副鼻腔炎と診断され,内服開始したが改善せず。疼痛出現から約2か月後,右上顎腫瘍と診断された。浅側頭動脈チュービング後,同チューブより化学療法を開始した。同時期に放射線療法を施行し,完全寛解を得た。約1年前に再発を認め,10か月前に右上顎腫瘍切除・右眼球摘出術・腹直筋皮弁による再建を行っている。
【検査】心機能・心電図は正常だが,30年以上の喫煙歴があり,閉塞性呼吸器障害が認められる。前回麻酔中もA-aDO2の乖離がみられ,吸入酸素濃度50%でPaO2 120mmHgであったと記録されている。術前診察時の酸素飽和度は95%であった。その他の血液検査上,異常はない。
【身体所見】開口制限あり(約1横指),頸部後屈制限はない。放射線療法の影響で,前回手術前から開口制限(約2横指)があったことが麻酔記録に記載されていた。前回手術により右鼻腔は閉塞しており,左鼻腔についても狭窄・変形がみられる。前回手術では,まず局所麻酔下に気管切開を行った後,腫瘍切除などを行った。前回,気管切開中の恐怖感が強かったため,今回は意識のある状態での気道管理の実施や局所浸潤麻酔での手術はしてほしくないという本人からの強い希望がある。また,気管切開に対しても抵抗がある。
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