特集 成人の自閉スペクトラム症とライフステージの課題
特集にあたって
広沢 正孝
1
Masataka HIROSAWA
1
1順天堂大学大学院スポーツ健康科学研究科
1Graduate School of Sports and Health Science, Juntendo University, Chiba, Japan
pp.365
発行日 2016年5月15日
Published Date 2016/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405205156
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成人の自閉スペクトラム症(以下,ASD)が,本邦における(成人の)精神医学領域で注目され始めてから,すでに20年以上が経過した。近年では,成人のASDをめぐる幾多の企画が,医学関連雑誌などで組まれ,さまざまな臨床知見が集積されてきた。もはや成人のASDは,精神医学における「新たなトピックス」とまでは言い切れなくなっているのではなかろうか。
しかし残念なことに,成人のASDをめぐる知見は,いまだ個々の実践経験やケースの域を出ず,これらを体系化できるような臨床実践理論(精神医学的問題,社会生活上の課題,治療や支援の具体策)の構築までには至っていない。その要因として,彼らの個体差(性差,年齢差)に加え,生育史の多様性,彼らの(成人としての)生活環境の幅広さを挙げることができよう。多様性や幅広さの面では,定型発達者にも匹敵するほどである。
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