今月の症例
多職種倫理カンファレンスがトータルペインの緩和ケアにつながった一事例
中野 真理子
1
Mariko NAKANO
1
1順天堂大学医学部附属順天堂医院がん治療センター/がん看護専門看護師
pp.522-526
発行日 2021年7月1日
Published Date 2021/7/1
DOI https://doi.org/10.15106/j_kango26_522
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はじめに
終末期の時期は患者にとっては人生の総決算の時であり,多くの倫理問題が集約されるときでもある1).筆者は,院内の緩和ケアチーム(palliative care team:PCT)看護師として活動している.日々終末期がん患者の緩和ケアを行っているが,患者の個別性や意思がより重要視される終末期においては,倫理的ジレンマを感じる場面を数多く経験する.『人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスのガイドライン』では,「人生の最終段階における医療・ケアについて,医療・ケア行為の開始・不開始,医療・ケア内容の変更,医療・ケア行為の中止等は,医療・ケアチームによって,医学的妥当性と適切性を基に慎重に判断すべきである」2)と述べられている.終末期の治療やケアの意思決定は,患者家族の意思決定を尊重することを基盤として,医療・ケアチーム内での話し合いが重要となる.しかし臨床の場では多職種による検討までできず,日々のジレンマを感じながら日常のこととして通り過ぎてしまう現状がある.
今回終末期がん患者の治療やケアに関して,多職種多部門から構成される臨床倫理コンサルテーションチーム(以下,倫理チーム)による倫理カンファレンスを活用し,トータルペインの視点での緩和ケアにつながった事例を紹介する.事例の個人情報は個人が特定されないよう一部加工した.
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