徹底分析シリーズ 酸素:でも,酸素は薬?毒?
巻頭言
入田 和男
1
1九州大学大学院医学研究院 麻酔・蘇生学分野
pp.331
発行日 2008年4月1日
Published Date 2008/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3101100069
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- 文献概要
酸素は,赤血球内に最も豊富に存在している。コ・オキシメトリーでは,健常人でもメトヘモグロビン(Hb)やカルボキシHbが検出される。赤血球内では,活性酸素によって1日に約3%のHbがメト化されているためである。
酸素は,われわれの生命維持に不可欠である。にもかかわらず,生体内備蓄は限られている。理由は,酸素毒性にあると考えられている。人類誕生の起源となる好気性細菌の誕生は,活性酸素の発生を予防するシステム,活性酸素を除去するシステム,活性酸素による傷害を補修するシステムの獲得と相まって可能となった。しかし,これらのシステムは大気中の酸素濃度20.6%に合わせて発達したものであり,それ以上の酸素濃度は想定されていない。つまり,酸素投与は,活性酸素の生成増大による酸化的障害発生のリスクを伴うことになる。
今回の徹底分析では,酸素投与によって得られる利益とともに,不利益について解説していただいた。酸素投与の呼吸・循環への影響,酸素投与が手術部位感染や術後悪心・嘔吐を抑制するという報告のその後の評価,間質性肺炎合併症例に対する酸素投与の考え方など,興味深い議論が満載である。
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